中国旅行でeSIMは使える?VPN付きeSIMの実力を検証
中国旅行でeSIMは使えます。ただし、通常のeSIMを買って有効化しただけでは、Google、LINE、YouTube、Instagramなど日本人が日常的に使うサービスにはアクセスできません。中国のネット規制(グレートファイアウォール)を回避するには、VPN付きeSIMを選ぶ必要があります。
筆者は上海と北京に計5回渡航しており、VPN付きeSIM、通常eSIM+VPNアプリ、現地SIMの3パターンをすべて試しています。その経験から言えるのは、中国渡航では「VPN付きeSIM」が最も手軽で確実な選択肢だということです。
この記事では、中国のグレートファイアウォールの仕組み、3つの通信手段の比較、VPN付きeSIMの通信の仕組み、具体的なサービス比較、そして速度の実用性まで、中国でのネット環境に必要な情報を一通りまとめます。
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グレートファイアウォールとは何か
中国のインターネット検閲システムは、通称「グレートファイアウォール(金盾)」と呼ばれています。中国政府が国内のインターネット通信を監視・制限するために運用しているシステムで、海外のサービスへのアクセスを遮断しています。
中国国内からアクセスできない主なサービスは以下の通りです。
Google全般(検索、Gmail、Googleマップ、YouTube、Google Drive)、LINE、WhatsApp、Telegram、Instagram、Facebook、X(旧Twitter)、ChatGPT、Claude、Slack、Notion、Netflix、Spotify。
筆者が初めて上海に行ったとき、浦東空港に着いた瞬間にこの現実を突きつけられました。LINEで到着連絡を送ろうとしたら送信中のまま動かない。Googleマップでホテルへの行き方を調べようとしたらページが表示されない。頭では知っていたはずなのに、実際に体験するとかなり焦ります。
逆に、VPNなしでも使えるのはWeChat(微信)、Alipay(支付宝)、百度(Baidu)、百度地図、微博(Weibo)、Bing(一部制限あり)などの中国国内サービスです。
グレートファイアウォールの厄介なところは、年々進化しているという点です。以前は単純なIPアドレスブロックが中心でしたが、現在ではDPI(ディープパケットインスペクション)という技術で通信の中身を解析し、VPN通信そのものを検知・遮断するようになっています。つまり、普通のVPNアプリを入れておけば大丈夫、という時代はとっくに終わっています。
グレートファイアウォールの詳しい仕組みと、筆者が実際に中国で使えたVPNについては中国VPNの検証記事に詳しくまとめています。
3つの選択肢を比較する
中国でLINEやGoogleを使いたい場合、選択肢は大きく3つあります。VPN付きeSIM、通常eSIM+VPNアプリ、そしてVPNアプリのみ(ホテルWiFi利用)です。
それぞれの特徴を比較表にまとめました。
| VPN付きeSIM | 通常eSIM+VPNアプリ | VPNアプリのみ | |
|---|---|---|---|
| 規制回避の確実性 | 高い | 中程度 | 低〜中程度 |
| 設定の手軽さ | 簡単 | やや手間 | VPN設定のみ |
| 速度 | 良好(10〜30Mbps) | VPNで低下しやすい | WiFi環境次第 |
| 料金(7日間目安) | 1,500〜3,000円 | eSIM代+VPN代 | VPN代のみ(月500〜1,500円) |
| モバイル通信 | 可能 | 可能 | ホテル等WiFi限定 |
| 事前準備 | eSIM購入のみ | eSIM購入+VPNインストール | VPNインストール |
この中で筆者が最も推奨するのは、VPN付きeSIMです。理由は確実性と手軽さのバランスが圧倒的に優れているからです。
VPN付きeSIMの仕組み:なぜ規制を回避できるのか
VPN付きeSIMが中国のネット規制を回避できる理由は、通信の仕組み自体にあります。
通常のeSIMで中国の通信キャリア(China Mobile、China Unicom等)に接続すると、その通信はすべてグレートファイアウォールを通過します。つまり、GoogleやLINEへの通信はブロックされます。
一方、VPN付きeSIMは「香港ローミング方式」を採用しています。これはどういうことかというと、eSIMの通信が香港(またはシンガポールなど規制外の地域)のサーバーを経由して処理される仕組みです。物理的には中国国内にいるのですが、通信は香港のネットワークを通るため、グレートファイアウォールの検閲を受けません。
イメージとしては、中国にいながら香港のスマホを使っているような状態です。香港ではGoogleもLINEも普通に使えますから、eSIMの通信も制限されないというわけです。
この方式のメリットは、VPNアプリのように「接続・切断」の操作が不要なことです。eSIMを有効にするだけで、最初から規制の外側を通っている。VPNアプリが接続に失敗して焦る、という経験を筆者は何度もしていますが、VPN付きeSIMではその心配がありません。
ただし、注意点もあります。香港ローミング方式のeSIMは、中国の現地キャリアに直接接続する通常のeSIMよりも通信速度がやや遅くなる傾向があります。香港のサーバーを経由する分、遅延が発生するためです。とはいえ、実用上は問題ないレベルの速度が出ます(後述の速度検証で詳しく触れます)。
通常eSIM+VPNアプリという選択肢
VPN付きeSIMが最良の選択肢だとして、ではなぜ「通常eSIM+VPNアプリ」という選択肢があるのか。それは、すでにVPNを契約している人にとっては追加コストなしで対応できるからです。
通常の中国向けeSIM(China MobileやChina Unicomの回線を利用するもの)は、VPN付きeSIMよりも安価です。1GB/7日間で500〜800円程度のプランがあります。これに、事前にインストールしておいたVPNアプリを組み合わせれば、規制されたサービスにもアクセスできます。
ただし、この方式には大きなリスクがあります。VPNアプリが中国国内から接続できない可能性があるのです。
筆者の経験では、NordVPNの難読化サーバーとExpressVPNは比較的安定して接続できました。しかし、接続に30秒〜1分かかることもあり、サーバーを何度か切り替える必要がある場面もありました。特に夜間(中国時間の21時〜24時頃)はネット利用者が増えるためか、接続が不安定になりやすい印象です。
さらに厄介なのは、グレートファイアウォールの検閲が強化されるタイミングがあるということです。全国人民代表大会(全人代)のような大きな政治イベントの前後や、天安門事件の記念日(6月4日前後)などは、VPNの接続が普段以上に困難になると言われています。筆者が北京に滞在していた時期は特に大きなイベントとは重なりませんでしたが、それでもVPNの接続が不安定な時間帯はありました。
VPNアプリの中国での使用感については、中国で実際に使えたVPNの検証記事で詳しくレポートしています。
つまり、通常eSIM+VPNアプリは「うまくいけば安い」けれど「繋がらないリスクがある」という方式です。確実性を重視するなら、VPN付きeSIMのほうが安心です。
VPN付きeSIMサービスの比較
中国向けのVPN付きeSIMを提供しているサービスをいくつか比較します。
| サービス | 容量 / 期間 | 料金目安 | 回線方式 | テザリング |
|---|---|---|---|---|
| Airalo(中国・香港ローミング) | 1GB / 7日 | 約1,200円 | 香港経由 | 対応 |
| Airalo(中国・香港ローミング) | 3GB / 30日 | 約2,500円 | 香港経由 | 対応 |
| eSIM2Fly(AIS) | 6GB / 8日 | 約1,800円 | 香港経由 | 対応 |
| CMLink(China Mobile系) | 各種 | 1,000〜3,000円 | 直接接続(規制あり) | 対応 |
注意:CMLink等の中国キャリア直接接続プランは、グレートファイアウォールの規制を受けます。GoogleやLINEにアクセスするにはVPNアプリが別途必要です。
筆者が最も使用頻度が高いのは、Airaloの中国向け香港ローミングプランです。理由は3つ。購入から設定までアプリ内で完結すること、香港ローミング方式で規制を確実に回避できること、テザリングに対応しているためホテルでPCも使えること。
Airaloで中国プランを購入する際のポイントがあります。Airaloのアプリで「中国」を検索すると、複数のプランが表示されます。このとき、プランの説明に「Hong Kong roaming」「China & Hong Kong」などの記載があるものを選んでください。中国のキャリアに直接接続するプランを選んでしまうと、VPN機能がないため規制の影響を受けます。
Airaloの使い方や設定方法全般については、Airaloの詳細レビューを参照してください。eSIMサービス全体の比較はこちらの記事にまとめています。
速度検証:VPN付きeSIMは実用的か
「規制は回避できるけど、速度が遅くて使い物にならない」では困ります。筆者がAiraloの香港ローミングプランを使って上海で計測したデータを共有します。
テスト環境は以下の通りです。端末はPixel 8 Pro(Android 15)、場所は上海市内(浦東のホテル、静安のカフェ、外灘エリア)、時間帯は午前10時台と午後8時台。Ookla Speedtestアプリで各地点3回計測し、平均値を採用しています。
上海での計測結果(Airalo香港ローミングプラン):
| 場所 | 時間帯 | 下り | 上り | Ping |
|---|---|---|---|---|
| 浦東のホテル | 午前10時 | 18.5 Mbps | 6.2 Mbps | 52ms |
| 静安のカフェ | 午前11時 | 22.3 Mbps | 8.1 Mbps | 48ms |
| 外灘エリア | 午後8時 | 12.8 Mbps | 4.5 Mbps | 65ms |
比較として、同じ場所でホテルWiFi+NordVPN(難読化サーバー)の組み合わせでも計測しました。
| 場所 | 時間帯 | 下り | 上り | Ping |
|---|---|---|---|---|
| 浦東のホテル | 午前10時 | 15.2 Mbps | 4.8 Mbps | 78ms |
| 浦東のホテル | 午後8時 | 8.3 Mbps | 2.1 Mbps | 95ms |
VPN付きeSIMのほうがVPNアプリ経由より安定して速い、という結果になりました。特に夜の時間帯は差が顕著です。VPNアプリはグレートファイアウォールの検閲をかいくぐるために通信を暗号化・偽装するので、どうしてもオーバーヘッドが大きくなります。
VPN付きeSIMの18〜22Mbpsという速度は、LINEの音声通話やビデオ通話はもちろん、YouTubeの720p〜1080p動画再生にも十分です。Googleマップの読み込みもストレスなくできました。正直、日本でスマホを使っているのと体感はほぼ変わりません。
Pingが50〜65msと、日本国内(通常10〜30ms)より高いのは香港を経由している分の遅延ですが、体感で気になるレベルではありません。オンラインゲームのように低遅延が求められる用途でなければ問題ないでしょう。
VPNアプリだけで済ませる場合の注意点
予算を最小限にしたい場合や、すでにVPNを契約している場合は、VPNアプリのみで対応するという選択肢もあります。ホテルのWiFiに接続し、VPNアプリで規制を回避する方法です。
この方法の最大のデメリットは、外出中にネットが使えないことです。ホテルのWiFi環境でしかVPNを使えないため、街中を歩いているときはGoogleマップもLINEも使えません。百度地図(Baidu Maps)やWeChat(微信)は使えますが、日本語での情報が限られるため、中国語がある程度わかる方でないと不便を感じるはずです。
筆者が北京で現地のSIMカード(China Unicom)だけを持って外出したとき、Googleマップが使えないストレスは想像以上でした。百度地図は日本語検索に対応していないため、ホテルの名前を中国語で入力しなければならない。「静安」という漢字はわかっても、ホテルの正式な中国語名がすぐに出てこない。結局タクシーの運転手にWeChatでホテルの住所を見せて何とか辿り着きましたが、VPN付きeSIMがあればこんな苦労はしなくて済みます。
もう一つ、非常に重要な注意点があります。中国に入国してからVPNアプリをダウンロードしようとしても、できません。Google PlayもApp Storeの海外アプリも規制されているため、渡航前に必ずインストールと設定を済ませておく必要があります。この準備を忘れると、現地ではどうにもなりません。
VPNアプリの比較はVPN比較記事にまとめています。
中国渡航前のチェックリスト
ここまでの内容を踏まえて、中国渡航前に準備すべきことをリストにしておきます。
出発の1週間前までにやること。eSIMの購入です。Airaloの中国向け香港ローミングプランを推奨します。VPNアプリも保険としてインストールしておきましょう。NordVPNかExpressVPNの難読化対応サーバーを事前に設定しておくのが安心です。
出発の前日にやること。eSIMのインストールと有効化テストです。自宅のWiFiをオフにしてeSIM経由でGoogleにアクセスできるか確認しましょう。VPNアプリの接続テストも行い、日本国内で正常に動作することを確認しておきます。
WeChatのインストールもおすすめします。中国国内ではWeChatが圧倒的なシェアを持つメッセージアプリで、タクシーの配車(DiDi)、モバイル決済(WeChat Pay)、ホテルのコンシェルジュとのやり取りなど、あらゆる場面で使います。日本でアカウントを作成しておけば、現地ですぐに使えます。
百度地図のダウンロードも済ませておくと、万が一VPN付きeSIMの接続が不安定な場面でもナビゲーションが可能です。中国のオフラインマップを事前にダウンロードしておけば、通信なしでも地図の閲覧はできます。
まとめ:中国ではVPN付きeSIMが正解
中国でeSIMを使うなら、VPN付き(香港ローミング方式)のeSIMを選ぶのが最も確実です。
通常のeSIMでは中国のグレートファイアウォールの規制を受けるため、Google、LINE、YouTubeなど日本人が必要とするサービスにアクセスできません。VPNアプリで回避する方法もありますが、接続の安定性で劣り、外出時に使えないリスクがあります。
VPN付きeSIMなら、設定はeSIMをインストールして有効化するだけ。VPNアプリのように「接続」ボタンを押す必要もなく、最初からグレートファイアウォールの外側を通るため、確実にGoogleやLINEが使えます。
料金は7日間で1,500〜3,000円程度。中国のネット規制という特殊な環境を考えれば、十分に費用対効果の高い投資です。
中国の旅行ガイド全般は中国渡航ガイドにまとめています。VPNの比較検証は中国で使えたVPN3選の記事を参照してください。eSIMサービスの全体比較はeSIM比較記事にまとめています。
よくある質問
中国でeSIMは使える?
VPN付きeSIMとは?
中国でVPN付きeSIMとVPNアプリ、どちらがいい?
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