海外旅行中のSNS利用|InstagramやXを安全に使うための設定
海外旅行中のSNS投稿には、3つの明確なリスクがあります。位置情報のリアルタイム公開による空き巣被害、フリーWiFi経由のアカウント乗っ取り、そして個人情報の意図しない公開です。
「旅行中くらい気にせず投稿したい」という気持ちはよく分かります。筆者も以前はヨーロッパ旅行中に毎日ストーリーズを更新していました。しかし、帰国後に知人が空き巣被害に遭ったことをきっかけに調べてみると、SNSの投稿から留守を特定されるケースが想像以上に多いことを知りました。
この記事では、海外旅行中にInstagram・X(旧Twitter)・FacebookなどのSNSを安全に使うための具体的な設定と注意点をまとめます。SNSを一切使うなという話ではなく、リスクを理解した上でどう付き合うかがテーマです。
リスク1:位置情報のリアルタイム公開と空き巣被害
海外旅行中のSNS投稿で最も見落とされがちなリスクは、「自宅が空であること」を全世界に発信してしまうことです。
Instagram のストーリーズで「バリ島なう」と投稿し、Xで「今日からパリ5日間」とポストする。旅行中は楽しさが先に立って、何気なくリアルタイム投稿をしてしまいます。しかし、この投稿を見た第三者からすれば「この人の自宅は少なくとも数日間は無人」という確定情報になります。
実際に、SNS投稿をもとにした空き巣被害は国内外で報告されています。2019年にイギリスの保険会社が行った調査では、空き巣犯の約30%がSNSの情報を参考にしていると回答しました。旅行の日程、空港の写真、チェックインスポットなど、犯罪者にとっては宝の山です。
アカウントが非公開であっても安心はできません。フォロワーの中に面識のない人が含まれている場合、その人がスクリーンショットを撮って情報を拡散する可能性があります。また、友人のアカウント経由で情報が漏れるケースもあります。あなた自身が投稿しなくても、同行者が位置情報付きであなたをタグ付けすれば同じことです。
対策:投稿タイミングをずらす
最もシンプルで効果的な対策は、リアルタイム投稿をやめることです。
旅行中に撮った写真や動画は帰国後にまとめて投稿する。これだけでリスクは大幅に下がります。とはいえ、旅行の高揚感をリアルタイムで共有したい気持ちもあるでしょう。その場合は、少なくとも24時間以上のタイムラグをつけて投稿するようにしてください。昨日の写真を今日投稿する分には、犯罪者にとってリアルタイム情報としての価値が大きく下がります。
ストーリーズの場合は、旅行の最終日にまとめてアップするという方法もあります。ストーリーズは24時間で消えるため、帰国直前に投稿すれば帰宅頃には消えています。
同行者がいる場合は、出発前に「リアルタイムでのタグ付けはしない」というルールを共有しておくことも大切です。
リスク2:フリーWiFiでのSNS利用とアカウント乗っ取り
海外旅行中、ホテルやカフェのフリーWiFiでSNSを開くことは日常的にあるでしょう。しかし、暗号化されていないフリーWiFiでSNSにログインすると、アカウントを乗っ取られるリスクがあります。
フリーWiFiの危険性についてはフリーWiFiのセキュリティに関する記事で詳しく解説していますが、SNSに絞ったリスクを整理しておきます。
セッションの乗っ取り
フリーWiFi上では、同じネットワークに接続している第三者が通信を傍受できる場合があります。SNSアプリのセッション情報(ログイン状態を維持するためのデータ)を盗まれると、パスワードを知らなくてもあなたのアカウントにアクセスできてしまいます。
乗っ取られたアカウントからフォロワーに詐欺メッセージが送信される、不適切な投稿をされる、DMの内容を読まれるといった被害が考えられます。
偽のWiFiネットワーク
空港やカフェで「Free_WiFi」という名前のネットワークを見つけたとき、それが本物かどうか見分けるのは難しいのが実情です。攻撃者が本物そっくりの偽アクセスポイントを設置し、接続した利用者のログイン情報を盗む手口は「Evil Twin攻撃」と呼ばれます。
偽WiFiに接続した状態でSNSにログインすると、IDとパスワードがそのまま攻撃者に渡ります。
対策:VPNの利用が最も確実
フリーWiFiでSNSを使う場合は、VPNを接続してから利用してください。VPNは通信を暗号化するため、第三者による傍受をほぼ完全に防げます。
VPNアプリを開いてサーバーに接続し、VPN接続中のアイコンがスマホの画面上部に表示されたことを確認してからSNSアプリを開く。この手順を習慣化するだけで、フリーWiFi上でのリスクは劇的に減ります。
VPNサービスの選び方は海外旅行向けVPN比較の記事を参考にしてください。出発前にインストールとテスト接続を済ませておくのが鉄則です。設定方法が不安な方はスマホの海外旅行向け設定の記事もあわせてどうぞ。
もう1つの対策は、フリーWiFiを使わずeSIMのモバイルデータ通信でSNSを使うことです。自分専用の回線なので傍受のリスクはありません。写真のアップロードなどデータ量が大きい操作はホテルのWiFi+VPNで行い、それ以外はeSIMの回線を使うという使い分けが現実的です。
リスク3:個人情報の意図しない公開
3つ目のリスクは、投稿内容そのものに含まれる個人情報です。旅行中は開放的な気分になり、普段なら投稿しないような写真をアップしてしまうことがあります。
パスポートの写真
「旅行始まるぞー」とパスポートの写真をアップする人がいますが、これは極めて危険です。パスポートには氏名、生年月日、パスポート番号、国籍、有効期限、顔写真と、個人を特定するための情報がすべて記載されています。
パスポート番号と個人情報の組み合わせは、身分詐称(Identity Theft)に使われる可能性があります。特にパスポート番号は一度流出すると変更するにはパスポートの再発行が必要です。
写真で一部を手で隠したつもりでも、画像処理で復元できる場合があります。パスポートの写真は一切SNSに投稿しないのが正解です。
搭乗券・QRコード
搭乗券のバーコードやQRコードには、想像以上の情報が詰まっています。予約番号(PNR)、氏名、出発地と目的地、フライト番号、座席番号、マイレージ番号などが含まれており、バーコードリーダーやオンラインの解析ツールで簡単に読み取れます。
予約番号が分かれば、航空会社のウェブサイトで予約内容の確認や、場合によっては座席の変更までできてしまいます。マイレージ番号が漏れれば、ポイントの不正利用につながるリスクもあります。
2019年に、ある日本人旅行者がSNSに投稿した搭乗券のバーコード写真から予約情報を読み取られ、航空券の予約を勝手にキャンセルされるという事件が話題になりました。搭乗券の写真は加工してバーコード部分を完全に消すか、そもそも投稿しないのが安全です。
ホテルの部屋番号・鍵のカード
ホテルの部屋の写真を投稿する際に、部屋番号が写り込んでいたり、ルームキーが映っていたりすることがあります。部屋番号が特定されると、同じホテルに滞在している悪意のある人物が部屋を特定できます。最近のホテルのカードキーにはRFIDチップが内蔵されていますが、写真からカードのデザインや番号を読み取ることで、ソーシャルエンジニアリング攻撃に利用される可能性もあります。
対策:投稿前のセルフチェック
写真を投稿する前に、以下の項目をチェックしてください。
- パスポート、搭乗券、ビザなどの書類が写っていないか
- ホテルの部屋番号、ルームキーが写っていないか
- 背景に住所や番地が読み取れる看板がないか
- 写真のEXIF情報(位置情報)が含まれていないか
特にEXIF情報は見落としがちです。スマホのカメラで撮影した写真には、撮影日時や撮影場所のGPS座標がメタデータとして埋め込まれていることがあります。SNSプラットフォームによってはアップロード時に自動的にEXIF情報を削除しますが、すべてのプラットフォームが対応しているわけではありません。
各SNSの位置情報をオフにする設定手順
ここからは、主要なSNSアプリで位置情報をオフにする具体的な手順を説明します。出発前に設定しておけば、旅行中にうっかり位置情報を公開してしまうリスクを防げます。
Instagramの設定
Instagramでは、投稿時に位置情報(場所)を手動で追加する仕組みです。自動的にGPS情報が付加されることはありませんが、投稿画面で「場所を追加」をタップすると近くのスポットが候補として表示されるため、うっかり追加してしまうことがあります。
位置情報を完全にコントロールするには、スマホ本体の設定でInstagramの位置情報アクセスを制限します。
iPhoneの場合:「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「位置情報サービス」→「Instagram」→「なし」または「次回または共有時に確認」を選択します。
Androidの場合:「設定」→「アプリ」→「Instagram」→「権限」→「位置情報」→「許可しない」または「アプリの使用中のみ許可」を選択します。
ストーリーズでも位置情報スタンプを追加できますが、これは手動操作なので追加しなければ問題ありません。旅行中は位置情報スタンプを使わないと決めておくだけで十分です。
X(旧Twitter)の設定
Xでは、ポスト(旧ツイート)に位置情報を付加する機能があります。デフォルトではオフになっていますが、過去にオンにしたことがある場合はそのままになっている可能性があります。
Xアプリの場合:「設定とサポート」→「設定とプライバシー」→「プライバシーと安全」→「正確な位置情報」をオフにします。
さらに、過去のポストに付与された位置情報を一括削除することもできます。「プライバシーと安全」→「位置情報」→「すべての位置情報を削除」をタップしてください。
Facebookの設定
Facebookには「近くにいる友達」機能やチェックイン機能があり、位置情報の利用範囲がやや広いのが特徴です。
iPhoneの場合:「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「位置情報サービス」→「Facebook」→「なし」を選択します。
Androidの場合:「設定」→「アプリ」→「Facebook」→「権限」→「位置情報」→「許可しない」を選択します。
Facebookアプリ内でも、「設定とプライバシー」→「設定」→「位置情報」→「位置情報サービス」をオフにします。また「位置情報履歴」もオフにしておきましょう。
旅行中のチェックイン機能(「〇〇空港にいます」等)もリアルタイムでは使わないことをおすすめします。帰国後にまとめてチェックインを投稿する分にはリスクは小さくなります。
スマホ本体の位置情報設定
各SNSアプリの設定に加えて、スマホ本体のカメラで撮影する写真のジオタグ(位置情報の埋め込み)を確認しておきましょう。
iPhoneの場合:「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「位置情報サービス」→「カメラ」→「なし」にすると、撮影時に位置情報が記録されなくなります。ただし、旅行写真を後から地図で振り返りたい場合は不便になるため、「アプリの使用中のみ許可」のまま、SNS投稿時にEXIF情報を削除する方法のほうが実用的です。
Androidの場合:カメラアプリの設定内に「位置タグ」や「位置情報を保存」という項目があります。これをオフにすれば撮影時の位置情報記録がなくなります。
筆者の運用としては、カメラの位置情報はオンのままにしておき(旅行後の写真整理に便利なため)、SNS投稿時にアプリ側で位置情報を付加しない、という方法を取っています。Instagram、X、Facebookはいずれもアップロード時にEXIF情報を自動削除する仕様ですが、LINEのタイムラインやその他のサービスでは削除されないこともあるので注意してください。
パスポート・搭乗券の写真がなぜ危険なのか
先に触れた内容をもう少し掘り下げます。パスポートや搭乗券の写真投稿がどれほど危険かは、具体的に「何が読み取れるか」を知ると実感できます。
パスポートのMRZ(機械読み取り領域)
パスポートの写真ページ下部には、2行の英数字の列があります。これがMRZ(Machine Readable Zone)です。MRZには以下の情報がエンコードされています。
- パスポートの種類
- 発行国
- 姓名(ローマ字)
- パスポート番号
- 国籍
- 生年月日
- 性別
- 有効期限
- チェックディジット
MRZはオンラインの無料ツールで簡単にデコードできます。つまり、パスポートの写真をSNSに投稿すると、たとえ一部を指で隠していても、MRZ部分が見えていれば主要な個人情報はすべて抽出可能です。
搭乗券のバーコード
航空券の搭乗券に印刷されているバーコード(PDF417形式やQRコード形式)には、BCBP(Bar Coded Boarding Pass)と呼ばれるIATAの標準フォーマットでデータがエンコードされています。
含まれる情報は以下の通りです。
- 旅客名
- 予約番号(PNR)
- 出発地・到着地の空港コード
- 航空会社コード
- フライト番号
- 搭乗日
- 座席番号
- マイレージ番号
予約番号さえあれば、航空会社のウェブサイトで予約の詳細確認が可能です。航空会社によっては予約番号と姓だけでログインできるため、フライトの変更やキャンセルが行われるリスクがあります。
筆者はこの問題を知ってから、搭乗券は絶対にSNSに投稿しないようにしています。空港の雰囲気を伝えたい場合は、搭乗券が映り込まない角度で空港の写真を撮るようにしています。
旅行中のSNS運用ルール:筆者の実践例
ここまで読むと「SNS投稿が怖くなった」と感じるかもしれません。しかし、ルールを決めて運用すれば、リスクを最小限に抑えながらSNSを楽しむことは十分に可能です。
筆者が海外旅行中に実践しているルールを共有します。
ルール1:リアルタイム投稿はDMとクローズドグループのみ
旅行中にリアルタイムで近況を共有するのは、家族や親しい友人へのDM(ダイレクトメッセージ)に限定しています。パブリックな投稿やストーリーズは旅行の最終日か帰国後にまとめて行います。
LINEのグループトークで家族に「今日はここに行ったよ」と送るのは問題ありません。限定された相手へのプライベートなメッセージは、パブリックなSNS投稿とはリスクの性質が異なります。
ルール2:書類・チケット系は一切投稿しない
パスポート、搭乗券、ビザ、ホテルの予約確認書、レンタカーの契約書など、個人情報が含まれる書類はどんな形であっても投稿しません。「ここだけ隠せば大丈夫」という判断は危険です。隠し漏れの可能性を考えると、投稿しないのが最も確実です。
ルール3:フリーWiFiでのSNS利用はVPN必須
ホテルやカフェのWiFiでSNSを開くときは、必ずVPNを接続してからアプリを開きます。VPN接続中は画面上部にVPNのアイコンが表示されるので、それを確認してからSNSアプリを起動します。
eSIMのモバイルデータ通信を使っている場合は、VPNなしでSNSを利用しても傍受のリスクは低いです。フリーWiFiに切り替えたときだけVPNを有効にする、という運用でも問題ありません。
ルール4:位置情報は帰国後に追加
旅行中は位置情報をオフにした状態でSNSを利用し、帰国後に投稿を編集して位置情報を追加する方法を取っています。Instagramでは投稿後に位置情報を追加・編集できるため、帰国後に「〇〇で撮った写真」と場所を追加しても旅行の記録としては十分成立します。
海外でSNSが制限されている国への対応
渡航先によっては、特定のSNSサービスが政府によってブロックされている場合があります。
中国ではInstagram、X、Facebook、LINE、Googleサービスのすべてが利用できません。ベトナムやイランでも一部のSNSが制限されています。UAE(ドバイ)ではVoIP通話(LINEやWhatsAppの音声通話)がブロックされています。
こうした国でSNSを使うには、VPNが必要です。VPNで日本や第三国のサーバーに接続すれば、通常通りSNSにアクセスできます。ただし、中国ではVPN自体の接続が不安定になることがあるため、対応力の高いVPNサービスを選ぶ必要があります。
VPNサービスの選び方や国別の対応状況は海外旅行向けVPN比較の記事を参考にしてください。
出発前にやっておくSNSセキュリティチェックリスト
最後に、海外旅行の出発前に確認しておくべきSNS関連の設定をリストにまとめます。
- Instagram・X・Facebookの位置情報設定を確認し、必要に応じてオフにした
- SNSアカウントの二段階認証を有効にした(SMS認証ではなく認証アプリ推奨)
- SNSアカウントのパスワードを推測されにくいものに変更した
- VPNアプリをインストールし、テスト接続を完了した
- 同行者と「リアルタイムのタグ付け・位置情報投稿はしない」ルールを共有した
- 旅行中の投稿ルール(リアルタイム投稿はDMのみ、等)を決めた
二段階認証は特に重要です。万が一パスワードが漏洩しても、二段階認証が有効であれば不正ログインを防げます。SMS認証は海外でSMSが届かないリスクがあるため、Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorなどの認証アプリへの切り替えをおすすめします。
SNSのセキュリティに限った話ではありませんが、海外旅行中のフリーWiFi全般のリスクについてはフリーWiFiのセキュリティに関する記事で、スマホの事前設定については海外旅行のスマホ設定の記事で、それぞれ詳しくまとめています。
海外旅行の思い出をSNSで共有すること自体は楽しいことです。リスクを正しく理解して適切な対策を取っておけば、帰国後に安心して投稿を楽しめます。リアルタイム投稿を我慢するだけで防げるリスクが多いので、ぜひ実践してみてください。
よくある質問
海外旅行中にSNSを使うのは危険?
旅行中のSNS投稿で気をつけることは?
海外でInstagramのストーリーズをリアルタイムで上げるのはNG?
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